第278号 3月10日
物語文の暗唱
アレクサンダとぜんまいねずみに取り組んでだいぶ日が経ちました。月曜日現在、Mさん、Cさん、Sさん、Mさん、R君の五名が合格しています。あと、惜しいところで、「残念!」を言い渡してしまった子も少なくありませんので、明日には10名を超えるのではないかと思います。ハードルは少し下げるかもしれませんが全員合格をめざしています。
物語文の暗唱について、私は結構こだわりました。「がまくん」、「かさこじぞう」そして、今回の「アレクサンダとぜんまいねずみ」です。「暗記して何かいいことあるの?」という考えをお持ちの方もいると思いますが、自分の経験も踏まえながら、考えてみます。
私の暗唱に対する原点は、実は日本語ではなくて、英語でした。高校時代、英語の田中久先生が、必ず教科書文を暗唱してくるという宿題を出しました。三年間続きました。それで何を学んだか。なめらかに発音すること、英語の強弱をつけること、区切りなどがわかってくることなどがありました。今では英文の読解力などほとんどありませんが、文だけはなめらかに読めると思います。時は流れて、私が中学校の教員だった時、英語暗唱大会に生徒を必ず参加させました。教科書の一つのプログラムを多くのお客さんの前で暗唱するのです。指導した生徒の表現力が最初と最後では見違える程上達します。
そして、昨年の東京研修での「百万回生きたねこ」の語り。二千人の前でマイクなしで語った小学校三年生の女の子の語りに、身震いしました。暗唱によってあれだけ、人の心を打つ語りができるのだということを知りました。
この暗唱は、大人にはまずできません。お子さんが毎日、五回、十回と練習していると思いますが、お父さん、お母さんが、負けじ魂でやろうと思っても、一ページが限度だというのがおわかりでしょう。私は三行でもつっかかって、子どもたちにからかわれています。これだけ長い文章を全て覚えきるのは、十代後半ぐらいまでです。
私は、すばらしい文を暗唱することで、日本語の美しい表現を心に刻んでほしいと思っています。文中に出てくる「ひみつめかした」などといううっとりするようなすてきな表現を子どもたちはとってもうまく表してくれています。それと、子どもたちが大きくなった時、文自体を忘れても、枝葉の小さくてすてきな言い回しは、言語中枢にしっかりと染み渡って、それが、表現する力、考える力になると思います。そして最後に、苦しくてもやりとげるがまん強さを学んでほしいと思っています。
子どもたちは最初の数ページはすらすらいきますが、だんだん顔が厳しくなり、ヒントを使い尽くす(四回まではセーフとしています)と泣きたくなるような顔をしてがんばります。そして、最後の「夜明けまで踊り続けました。」を言い終わると、こんなに嬉しいことは他にはないっていうぐらいの満面の笑みを浮かべて大喜びします。子どもたちにとって絶対の自信になっています。
暗唱は、話す人と聞く人がいて成り立つものと考えます。是非、おうちでも、お子さんの読みを聞いてあげていただければと思います。なかなか感動があるものですよ。