第58号 7月6日 

子どもたちも私の心を読んでる?

 貨物列車という歌遊びをご存知でしょうか。「かもーつ列車シュッシュッシュー、いそーげ急げシュッッシュッシュー…」じゃんけんをして、負けたら勝った人の後ろに連結して、何回もじゃんけんしてだんだん貨物列車が長くなっていくという遊びです。音楽の時間何回かやって子どもたちがすっかり気に入った歌遊びです。
 この間の給食時間、六年生の放送委員が慌てて私のところにやってきました。「せんせー、かけるCDないよー。」私は放送委員担当の先生の一人だったからです。「放送室にあるそのへんのかければいいっしょ。」って言ったのですが、「なんもいいのないさー。先生何か持ってないのー?」「先生がそんないいあるわけないっしょ。」「じゃあ、一年生のCD貸してー。」「わかった。貸してやる。」六年生の子も昨年理科を教えてある程度ツーカーの人間関係だったので、魂胆が見え隠れしましたが、CDを貸してあげました。「いいか、貨物列車だけはだめだぞ。一年生みんな踊りだすからな。」ニコーっとして六年生の女の子二人は去っていきました。
 お昼の放送が始まって一曲目にかかったのは、予想を裏切ることなく貨物列車でした。私と放送委員のやりとりを聞いていた子どもたちも、これまた予想を裏切らず給食そっちのけで歌って踊って長い貨物列車ができました。乗り乗りは、クラスの約半分。
 さて、私は、立場上一緒にこそ歌いませんでしたが、半分あきれて、半分子どもたちの楽しそうな姿に目を細めて見ていました。まあ、全て私の予想した通りの動きでして、こんなことで「給食時間でしょ。座りなさい。」などと度量の小さいことは、言うつもりもありませんでした。
 おもしろいのが、子どもたちは、私の方を見ながら、シュッシュやっているのです。子どもたちにも、私が立ち歩いているのをおこらないということを見抜いていたのですね。
 楽しむ時は思い切り楽しむ、笑う時は思い切り笑う、真剣にやる時は、心を集中させて取り組む、そんな私の言外の思いをきちんと子どもたちは感じていたのだと思うと、妙に、子どもとの関係はうまくいっているのかなあなどと思って、何だかうれしくなってしまいました。
 そう思っている間に、今度は「世界中の子どもたち」がかかりました。運動会で踊った曲です。どうなったか予想はつきますね。放送委員の二人が笑いこけながらCDをかけている様子が手に取るようにわかります。私より一枚上手だなあと思いました。
 そんなわけで、その日の給食の終わりは普段より遅くなったわけで、昼休みはお預けになってしまいました。まあ、自分たちが楽しんだ結果に出した結末なので、文句を言う子もいなかったのですが。ちょっとへんだけど、とっても明るい乗りやすい一組の小さな給食風景でした。